番組審議会

第62回 放送番組審議会議事録

1. 開催日時:平成13年4月25日(水) 午後3時
2. 課題番組:「テレメンタリー2001緊急企画 情報操作」
          3月31日(土) 午前11時15分~午前11時45分(30分)放送
3. 記事の概要:
・えひめ丸の引揚げが実現する日まで、被害者とその家族の傷ついた心は癒されない」と番組は結んでいる。そのことが実現しなければ癒されず、実現すれば癒される、との見解とも聞き取れるが、果たして、そうなのか、それでいいのか。
御家族の中に引揚を求める声が強くあるのは事実としても、そのこと一点に当事者の方々の心情がすべて集約できるかのような表現は、一方でその声のみにとらわれて報道の客観性を欠くきらいがあり、他方で情緒的に同化・移入するあまりかえって当事者への思いやりにも深さが欠けることになっているのではないかと感じる。
話はとぶが、イチローをはじめ日本人の大リーガーについて、わがメディアは、「仰ぎ見憧れるアメリカ・メジャーリーグで、大リーガーを相手に日本人の我がイチローらの活躍」の映像を、感動ものの目出度い快事として日々刻々高揚感をもって流している。しかし、メジャーリーグが我がものであるアメリカからすれば、イチローら外国人選手をわがメジャーに採用・導入したに過ぎず、イチローのヒットに拍手するアメリカ人観客は自分の払った入場料の分、そのヒットあるいは選手個人に拍手するのであって、日本も日本人も、彼らにとってはもとより無関係なことだ。更には、欧米白色人種にある白人優位の思想の伝統からアメリカの白人社会をながめるとして、三大プロフェッショナル・スポーツといわれるバスケットボールにせよアメリカンフットボールにせよベースボールにせよ、観る側は多くが白人、観せる(選手)側の大半は外国人を含めて有色という現実の構図の中で、イチロー達を観る視線は、笛太鼓の日本の球場での観客と選手の関係とは余程違ったものがあるのではないか。我々日本人は、自分と他者とが共通のものであるという思いが奥底にある。他者が異民族・外国人であっても同じことだ。ために一旦対立や衝突の場面に遭遇すると、他者が見えないということが起こる。だから、捨て台詞の名手とも評される人気キャスターでさえ、松本智津夫以下「オウム真理教」を「わからない」ですまし、メディア全体も、「動機」は、「謝罪」を、というのみで過ぎている。
ところで、今回の件で一つ、査問の場に艦長がその妻と手をつないで出頭する姿が見られる。最近の日本人はどうか知らないが、確かに奇異に映った人も多かろう。しかし、あの夫婦の手に手をとっての姿は、夫婦仲の良さを表現しているものでは毛頭ないと思う。個人が社会とも国家とも孤立して対峙し、その中で個人と個人もまた根本的に競争関係にあって敗者と勝者に分かれるというのがあの国の社会である。艦長は、今回の件で刑事罰を受けるかどうかは分からない(受けないようだ)が、彼が自らの人生をそこに設計し、彼なりに成功してきた海軍の社会からドロップアウトすることになるとすると、彼はここで人生の敗者の側に追いやられる。つまり、自業自得とはいえ彼は今、彼の属した組織・国家と対立・敵対関係にあり、まわりはすべて敵、彼の手を握る妻の手は、その彼のおそらくは唯一無二の味方であることの表示だと思われる。仲のよいところをみせるなどという甘い話ではないことだけは見ておくべきだ。蛇足だが、我が国でもつい最近ストーカー犯罪をおかした妻を、とことん戦うしかないと励ました夫の判事がたが。
もう一つ、アメリカのメディアが「実習船」(えひめ丸)のことを単に「fishing boat(フィッシングボート)」としか表現をしていないということがある。何故その様にしか書かないのか、書けないのか、報道たるものお膳を向けかえて相手のことを知り伝えることもあって然るべきである。
なお、番審の場のことであり、番組のことが先になり末筆となったが、悲しくも痛ましい事態にみまわれた同胞・同県人に心からのお悔やみを申し添える。

・番組の中心の一つとして、アメリカ合衆国の国民と日本の国民の国民性の違い、物事に関する捉え方が違うというところが突かれている。例えば、ワドル艦長が妻と手をつないで査問委員会に出席していく様子を捉えて、私だって夫と手をつないで歩きたいというようなくだりもあったが、ここは、文化の違いとして理解するべきであって、見る側としても文化の違いであるということを理解しなければならない。そういう意味で、あの場面では文化や国民性の違いを感じさせられた。
番組の中では、悲痛というか悲惨というか、そういう場面が次々に出てきて、もし私が被害者の立場であったとすれば、もう少しそっとしておいて欲しいと思うだろうなという感じを受けた。しかし、凡そ報道というものはそういうものなのだと言われそうな気もする。また、軍事的な事柄についての厚い壁というものもつくづく感じさせられた。

・情報操作ということは、民主主義国家においては本来あってはならないことだが、現実の問題としては多かれ少なかれ、どの国でも行われているようなことも聞く。そうなると、逆に一般人の情報源としてはマスメディアが唯一のものだといっていい状況であり、マスメディアが一歩踏み間違えると、情報操作というべき状態になる。マスメディアの恐ろしさ、マスメディアの冷静で客観的な姿勢の大切さを痛感した。
例えば、ワドル艦長が夫人と手をつないで歩いてくる、というようなシーンは、被害者の反感を不必要に煽ることにならないか。さらに突き詰めると、そもそもあのシーンを流す必要はあるのか。すこぶる疑問である。あるいは、森首相のゴルフのシーンも、全マスメディアが全部同じシーン。しかも、事件の時の姿ではなく、半ばプライベートともいうべき映像、単純にゴルフを楽しんでいるだけのシーンを繰り返し、繰り返し出してくる。あのシーンを流すことの妥当性についても大いに疑問がある。確かに、事故を知らせられたときには、たまたまゴルフをしていたようだが、それを誇張して視聴者の反感を煽り立てている。一歩間違えると事実の歪曲となり、あるいは視聴者の感情を不必要に助長することになる。このような懸念を感じた。

・この事件は今年のニュースとしてトップ級のものである。また、21世紀の大事件の一つとなると思われる。そういう意味では、この事件の情報には歴史的な価値がある。したがって、この事件については、今後どういう評価を受けるか、どういう扱いをされるのか、という歴史的な視点を忘れてはならない。この番組の意義という意味で言えば、単に事件の有り様を追ったというだけではなく、歴史的視点からの記録としての意義がある。
この事件には取材するうえで大きな障壁がある。一つには取材場所がハワイという遠隔地であること、加えて、事故現場は海の上である。また、海軍が相手ということで軍事問題の機密性という分厚い壁がある。また、悲嘆に暮れている被害者に対する取材のあり方、こういう状況では取材自体が被害者のストレスになる。こういう中で取材をしていかなくてはならない。一つの番組として完成させなければならない。今回の番組のタイトルは「情報操作」ですが、いま申し上げたような制約の中で、どれだけ独自の取材ができ、独自の映像が盛り込めたか。この点がこの番組の評価を決めると思う。また、ローカル局という立場から、この事件をどう取り扱うのかという視点も大切だ。

・30分間という時間の中に、この事件が発生してから約一ヶ月の出来事が簡潔にまとめられていた。また、画面の隅に出てくるスーバーインボーズも親切だった。
一つ違和感を感じたのは、被害者の発言の文字スーバーがライトピンクになっている。アメリカ合衆国側の発言は黄色だった。被害者の発言の文字スーバーがライトピンクというのは、被害者の状況に不似合いではないか。ワドル艦長などの発言などで大切なところは赤で大きく出されていた。
最後のあたりで、被害者の奥さんの書いた手紙が出てくる。あの手紙は新聞でも取り上げられていて、手紙の結びのところで、この事故をきっかけにして海が安全になるといいねという言葉があるが、ただ悲しみに暮れるだけではなく、これから子供を育てて、一家を支えていこうとする悲痛な決意が感じられて涙が出た。番組内でもアナウンサーが朗読をしていましたが、声のトーンが明るすぎた。あの手紙を書いた女性の声が幾分高いので、それに合わせたということかもしれないが、あの内容からすれば読み方としては明るすぎた。
同じ様に「えひめ丸事件」を取り上げた番組は他局でも見られ。EATとしてここに拘ったというところ、ここを強調したいといったようなところが、もっと前面に出てきても良かったのではないか。ローカルニュースを比較すると、各局の取材力の差が歴然と分かる。
新聞のラ・テ欄の表記について、当日の新聞をみると単に「テレメン」としか出ていなかった。番宣があったので、「えひめ丸事件」を扱った番組だということが分からない訳ではない。しかし、ラ・テ欄の表記は視聴者の行動に大きく影響を与えると思うので、もっと多くの人に見てもらうには、何か「えひめ丸」という文字を出すようにするべきだと思う。視聴率がどうこうというよりも、愛媛県民が大きく関心をよせている事件なので、せっかくの作品がもったいないと思った。

・番組としての出来栄えは良かった。毎日、パラパラと出ているニュースを、一連のメッセージを軸にして、番組として貫かれている。文化の違い、軍の問題などいろいろと考えさせられるものがあった。被害者の話などは我が身のことのように思えて、胸が一杯になった。この事件は、まだまだこれからも進展していくから、これからの対応をどうするのか。続編のようなものをつくるのか。今後の課題となるところだろう。時宜を得た良い番組だと思う。

・数日前にワドル艦長が軍法会議にかけられず、行政処分的なもので終るというニュースがあり、これでは被害者の方も納得できないだろうなと思いながら、あらためてこの番組を見た。一つの疑問として、この番組のタイトルをなぜ「情報操作」としたのか。この事件の捉え方としては、なぜ事故は起きたのか、なぜデモンストレーションをしたのかというように事故の原因に焦点をあてるという扱い方もあったと思う。 また、この事件はまだ生々しすぎて客観的な目で見るなどということはできず、そういうことができるようになるには、もっと時間を経ないと無理だと思う。そういう意味でいえば、土曜日の朝の30分番組ということでやむを得なかったのだと思うが、間にCMが入っている。そして、そのCMが何か馬鹿馬鹿しいほど明るくて、陽気である。被害者の方の悲痛な叫びの中に、あのCMが入るというのは、違和感が激しすぎる。何とかスポンサーにお願いしてCMのタイミングを変えることはできなかったのか。

・美しいタイトル動画のあと、本編に入ったところで、重苦しい鐘の音が「ゴーン、ゴーン」と二回響く。あの音だと何か打ちのめされたような感じがして、この番組は追悼番組なのかと思ってしまう。実際にはそうではなく、決して生還への望みを棄てていない。もしかしたら、もう駄目かもしれないというに内心の声との葛藤がありありと感じられる。そこに、あの鐘の音をかぶせるのは、何か駄目押しをするような感じがする。番組の中で音や音楽の占める割合は大きいと思うが、あの音で傷ついた方もいたのではないかと思う。
また、被害者の方々が記者会見している様子が沢山出てくるが、何か手元の原稿のようなものを見ながら話している。もちろん、心の底からほとばしる叫びであることは分かが、すこし違和感のようなものがあった。
最後のところで、森総理の顔がアップで出てきたが、これは何か意味があるのか。意味が分からない。
ナレーションについては、落ち着いた感じで良かった。

・番組の仕立て方としては、やはり被害者への同情という部分が中心となっていて、「情報操作」というタイトルの番組としては、まとめ方が今一つはっきりしないままに終っている。番組の出だしのところは、まさにアメリカ合衆国海軍の説明の不自然さがよく現れていたが、なぜ海軍はああいう態度をとるのかについての追及が弱い。ここには、軍隊や警察などで共通に見られる「身内」意識がある。そのあたりの切り口をはっきりさせたほうが良かった。被害者への同情というのは、一つのまとめやすい視点だと思うが、タイトルから期待される番組内容としては物足りない。
また、宇和島水産高校の生徒達があそこで実習していたのか。ハワイはアメリカ合衆国でも最大級の軍港であるし、事故が起きたのもアメリカ合衆国の領海内である。この点については、実は依然は主としてマラッカ海峡で実習していたのだが、海賊が出没して危険になったため、アメリカ合衆国側に頼んでハワイ沖での実習を許してもらっている。アメリカ合衆国の領海だから何をしても良いというわけではないが、アメリカ合衆国側はその辺りに触れることはせず、事故原因を探っている。しかし、海軍の「身内」の論理が立ちはだかったという構図であろう。
日米彼此の考え方の違いとして興味深かったのは、駐日大使のフォーリー氏の発言で、「ケネディJr夫妻は飛行機事故で亡くなり遺体は海底に沈んでいるが国民は海に眠っていると思っていて引き揚げようとはしない。真珠湾奇襲で撃沈された戦艦アリゾナの乗組員についても同じだ」というものだ。船体の引き揚げにあくまでも固執する日本の被害者の出方に当惑しているような発言があった。

4. 訂正又は取消しの放送の実施状況についての報告:
担当取締役が下記の通り説明、審議会はこれを承認した。
訂正又は取消しの放送の実施状況についての報告
標記については、放送法第4条による請求があり、訂正の放送を実施しましたので、放送法第3条の4第5項により、ご報告申し上げます。

4-1.原因となった放送の内容及び放送年月日
原因となった放送の内容 交通事故についての報道
放送年月日 : 平成13年4月1日(日)
真実でない事項
4月1日午前6時50分頃、伊予郡砥部町宮内の国道33号線の交差点で、中央分離帯側、第二走行車線を久万町方面に走っていた乗用車(甲さん35歳運転)が、右折のため停車していた軽トラックに追突。
軽トラックを運転していた乙さん64歳が事故から1時間後に死亡。
真実でないことが判明した日 : 平成13年4月1日(日)

事故の内容
4月1日午前6時50分頃、伊予郡砥部町宮内の国道33号線の交差点で、中央分離帯側、第二走行車線を久万町方面に走っていた軽トラックが、右折のため停車していた乗用車(甲さん35歳運転)に追突。
軽トラックを運転していた乙さん64歳が事故から1時間後に死亡。

4-2.訂正放送の請求者 甲さん 35歳男性

4-3.請求に対してとった措置及び年月日
請求に対してとった措置 当事者への謝罪を行ない、訂正ニュースを放送した。
訂正放送を実施した年月日 : 平成13年4月1日(日)

4-4.監督官庁への報告
平成13年4月5日(木)付で総務大臣宛報告を了した。

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