番組審議会

第112回 放送番組審議会議事録

1. 開催日時:平成18年4月25日(火) 午後3時
2. 課題番組:「最前線へ!消防士になりたい ‐女性隊員奮闘記‐」
          平成18年4月15日(土) 午前6 時30分~7 時00分(30分)放送
          再放送 平成18年4月22日(土) 26時15分~26時45分(30分)放送
3. 記事の概要:
・女性は就けない仕事、男性は就けない仕事が本当に少なくなった現代。とはいえ、それぞれに「向かない」仕事はある。消防士も職務、体力面、環境面を考えたとき、決して女性に向くとは言い難い。その中で消防士の学校に入学して消防士を目指す女性の姿は、「質実剛健」と使命感に惹かれるものがあり、そして期待に違わず、幾分弱弱しさを残しながらも、ひたむきで感じの良い彼女たちがいた。ただ消防士を目指すモチベーションが一人について(火傷を負った経験)描かれているだけであったこと、彼女たちの中から表層的な自己反省ではなく、内部にある本気の言葉が出てこなかった点に物足りなさが残った。印象に残ったのは「筋トレ」や訓練の大変さ、「女性はまだまだ」という追いつかない実感、男同士だと「なぐられ、けられて覚える」という古い時代の軍隊のようなやり方で教えられる仕事のことだった。女性隊員の活用が効果をあげている前例があれば、他県や他市まで取材に行く「しつこさ」が欲しかったし、そういう前例が捜したけれどないのなら、なぜないのかを問いかけるなど、深める箇所があればと思った。番組中の訓練のところで「○○よし」と何度か確認する場面で、女性の言葉が聞き取れないが、「○○」が何か知りたいと気になる。最近バラエティ番組でやたら会話を「 」で画面にいれるのはいささか閉口気味だが、この番組のここは入れてほしかった。筋トレや訓練のシーン、顔から落ちる汗などよく撮れている。カメラワークと編集にスピード感があり、緊張感を映し出すことに成功している。ラストシーンがとても気に入った。質問しているところにベル、断りを言って職務に向かう彼女。その後何もコメントがなくても伝わるものがあった。

・ご見終わって物足りないという感じが残ったが、制作ディレクターの弁によると、取材期間が短かったとのことで、その辺りに原因があるのではないか。私は土曜の朝の放送をリアルタイムで見たが、朝の用事を済ませながら見たせいもあるが、もう少し字幕でのフォローがあっても良かったのではないか。例えば、消防署の建物内部での会話などで、声が響いて聞こえにくいところがあった。また、この番組の放送時間が早朝と深夜となっているため、音を大きくできにくいということもある。また、火傷をして救急隊員に助けてもらい、消防士を志すようになったという動機は分かりにくかった。夕方、松山市の中の川通りなどを車で走っていると、空気ボンベを背負った男性消防士が走ってトレーニングをしている姿をみかけるが、救急隊員と消防士との違いが私にはよく分からないところがあり、救助された体験が、消火する人になりたいと思うことにつながるのか分からなかった。また、ご両親が、この娘は大学で教員資格までとったのに消防士になったとおっしゃっていたが、この辺りの事情はもう少し詳しく、本人の口から聞きたかったと思った。また、本人がゆっくり訥々と話す方なので、言いたいことがなかなか伝わってこない、あるいは言葉を選んで間延びするというところもあったので、そういう意味でも、本人の言っていることのポイントをテロップで示すなどの配慮があればよかったのではないか。母校のボート部に行ったシーンについては、頼んで行ってもらったのだろうというところが、すこし見えていた。彼女が近況報告をしていないというのが会話の内容からありありと判った。先生の言葉はすばらしいものだったので、そこで作ったという部分が感じられてしまったことは惜しまれる。ラストシーンが気に入ったという意見もあるが、ベルが急に鳴って、少しカメラがぶれたところの感じは良かったと思うが、彼女の走り去っていく背中の映像で締めて欲しかった。全体として取材期間が不足していたことが影響していると思う。

・まず、番組の終わりがどこなのか分からなかった。また、描写が浅い感じがして、もっと必要な映像があったのではないか。また、なぜテレメンタリーでこれを取り上げたのか、他に題材はなかったのかとも思った。また、ナレーションについては、ナレーションの役割とはどういうものかという掘り下げた考慮が必要だったのではないか。しかも、ナレーションが聞き取りにくく、音楽に埋もれてしまっているところがあった。トーンも低くて、この女性たちは前向きに希望と夢を持って消防士としてやっていくのだから、力強い感じに仕上げるのも一つの方法だったと思う。最後は、イタリアの古典歌曲で締めくくっていたが、あの歌は涙であけくれる気持ちを表現したもので、ちょっとそぐわないのではないか。歌としては「どうしてそんなにつれないことをするのか。この涙とともに私は毎日明け暮れて、大変辛い思いをしている」というもので、実はこの仕事をするのは辛いのだという意味で使っているのかなと思ったりもしたが、そうでないなら、もっと相応しい曲があったのではないかと思うし、もっとドラマチックな曲などの方がよかったのではないかと思う。メロディーだけで選んだのかとも思うが、私の感じる曲のイメージとは違う。また、家族の会話が出てきて、母と娘のコミュニケーションの様子が出てくるが、何故消防士になりたかったのか、消防士でなければならなかったのか、その辺りがダイレクトに伝わってこない。それは、インタビューなどで引き出してこないといけないのだが、引き出し方としては弱いように思った。もっと掘り下げて聴けば、彼女たちも答えられるし、彼女たちは社会に出てから未だ浅いので、それを引き出すのは難しいという部分はあるが、何か消化し切れていない、尻切れトンボというか、もったいない。4人をもっと輝かせてあげて欲しかったと思う。

・この話題を何故取り上げたのか。どのような角度で取り上げたのか。その辺りがはっきり見えてこなかったというところがある。

・この話題を取り上げたことは、まず素晴らしいと思う。報道番組としての必要条件を充たしている。つまり、最先端のこと、最も新しい「今」を伝えるということ。これが男女協働参画社会の実態なのだということ。受け入れ側の男性のとまどいも、しっかり描かれている。女性のとまどいも描かれている。それだけで十分とも言える。造りの細部について、注文をつけようとすればいろいろ出てくるかも知れないが、皆に知らせたいこと、皆が知りたいことを題材として取り上げ、描いているということだけで基本的にはいいと思う。ナレーションについていえば、ナレーションというのは「語り」であり「読み」ではないが、そういう意味では「読み」になってしまっているとは思った。造りについて言えば、冒頭で火災現場のショッキングな映像が出てくる。頭でそういう映像を出して眼を惹き付けるというのは手法として理解できるが、番組の主題は女性消防士だから、映像として強烈なだけに、視聴者が番組のテーマを火災現場の話だと勘違いする危険がなしとしない。しかし、そういうことはあるが、全体として、まず女性消防士が居るということだけで多くの視聴者は驚いたと思う。そして放送番組として何が最も重要なのかというと、それは題材であり、題材として何を取り上げるかというのが報道機関の使命そのものだ。そういう点を評価したい。取材が足りないという意見もあるかも知れないが、取材時間には多かれ少なかれ制約があり、これで十分ということはない。撮り足りない部分は他の形で補えばよいし、また、今の時点ではここまでという形でまとめておいて、何年か経て「あの女性消防士は...」という番組にしてもよい。大切に作っていけば、もっと大きな番組になりうると思う、制作ディレクターにとって、局にとって一つの財産ができたと思う。私が他のテレビ局の人間であったなら、この番組を見て「しまった。やられた。」と思うだろう。

・女性消防士が居るということは、それ自体社会に知られていないことではあるが、その紹介ということだけでは番組にならないようにも思う。

・この番組を見て、私は映画「愛と青春の旅立ち」を連想した。リチャード・ギア扮する男性が軍隊に放り込まれて、鍛えられていく話だが、それのeat版かなと思う。そういう爽やかさが全体として感じられる。男同士だったら、殴ったり蹴ったりして教え込むというようなくだりがあり、そういうのは非人道的な古い軍隊のやり方だという批判もあると思うが、火事場は戦場も同様の修羅場であり、自分の命だけでも危ないところを人の命を救うという仕事であるから、理屈で説いたのでは時間がかかるから、結論だけ先に叩き込むという方法には、やむを得ないところはあるのではないかと思う。その辺りの実態を取材し、また他県ではどうなのかを調べて紹介して欲しいようにも思う。また、そもそもeatが自社でこのような番組を制作することには大賛成で、これからもどんどん作っていただきたい。今のテレビ番組は東京制作のものがほとんどで、大阪その他の大都市の局が少々制作しているぐらいだと思う。20分でも30分でもいいから、地元のテレビ局が地元のことを題材にして作る番組をどんどん増やしてほしいと思う。また、この番組は、女性消防士が珍しいということが制作のきっかけの一つだと思うが、普通の仕事でも突っ込んで取材すれば、いろいろ問題点が出てくるものだ。例えば、介護の問題でも、実際の現場はどうなっているのかとか、必要なところに必要なサービスが給付されているのかとか、貧富により不当な格差が生じていないのかとか、いろいろ切り口が考えられる。一見平凡なものに潜む深い問題を、eatで取り上げて番組にして欲しい。

・制作ディレクターの真面目な表情を見ると、ちょっと矛先が鈍るが、放送の前に朝日新聞松山総局にeatからこういう番組を作りましたというファクシミリが来た。タイトルを見ると「最前線へ~消防士になりたい~女性隊員奮闘記」とあり、掴みかがいいなと思って、中を読んだところ、入社3年目のディレクターが半年間かけて追いつづけたという。記者として半年間追い続けられるというのは、とても幸せなことだと思った。懸命にがんばる彼女たちの姿と変わりはじめた消防署の現実を伝えるとある。これは中々のものだと思い、紹介をしようと思ったとき、3年目のディレクターというのは、どんな人だろうと思い、顔写真をくださいと言って、写真をもらい、紹介記事を載せた。私はあまりテレビを見ないほうだと思うが、現場は火災現場とか消防署とかいうところで、自分が集められる映像としてどのようなものがあるかということを思うと、取材期間が短かったという話はあったが、イメージできる映像素材はほぼ集めることができているとおもう。男性消防署員にインタビューしている場面の言葉が制作ディレクター自身の言葉で、制作ディレクターの等身大の質問ができているのであれば、入社3年目の制作ディレクターというのはどういう人か、制作ディレクター自身を出す、この人の等身大のレポートですよというような仕掛けがあってもいいのかなという気がする。自分の実験的な試みかもしれないが。新聞は活字で読ませるものだし、テレビは映像で、どちらかというと感性に訴えるものだということからすれば、最初の音響効果、私は音楽には詳しくないので、それがどういう音楽かという深い部分は解らないが、映画のような良い音響効果のように感じながら、半年間追い続けながら締め切りが突然10日後になり、10日しかないのかという躊躇の念はあったかも知れないが、限られた時間の中で作り上げていく作業、そこに何らかのアラがあったとしても、それは3年目のディレクターの責任ではなくて、デスク等の責任だと思う。掴みもよく映像も良かったと思うが、デスクの責任ということで言うと、ディレクターが殺し文句を多く出していて、胸を打つものがあり、若干いざなったところはあるかも知れないが、彼女たちは人生の中で大きな経験をして、思い出の場所という言葉を遣っていて、少し安易な言葉遣いだと思ったが、ある時期、人生をかけて頑張った場所に、弱音を吐きそうになったとき、達成感が得られそうになったときに、彼女が行く、そのようなこと、ディレクターの心の到達点が一緒になったので、そういう場面を引き合わせたのだろうと考えれば、言葉の遣い方、殺し文句の遣い方が粗いという感じはした。私はそういう言葉を大切にしたいと思っているし、そういう言葉でつい萎えてしまうので、制作ディレクターの等身大のレポートということをすれば、それはそれで批判的な意見があるかも知れませんが、とりあえず3年目のディレクターが半年間追いかけた作品であって、そこに本当に制作ディレクターがこだわって、1年後なり3年後なりの彼女たちの姿を追う。eatは社会の窓を女性消防士に見続けるのだというような本当のこだわり、突破力があるような気がした。記者として半年間追い続けるというのは、なかなか幸せな境遇だと思う。

・私も全体として肌理が粗いように感じていたが、制作ディレクターから時間がなかったというお話を聞いて納得した。また、確かにもう少し前の段階の彼女たちの姿が欲しかったと思う。この番組には、番組の内容として精神力や向上心のようなものを込めようという姿勢が感じられるが、それを学校の新入生や新採用の教員に見て欲しい思った。腕立て伏せの場面や大きな声を出しているところ、壁を必死に駆け登っていくところ、ああいうことが人間としての成長に必要なのだということを見て欲しいと思う。特に、今治出身の女性の姿には、涙が出る思いをした。私は、番組制作の技術的なことは全然解らないが、本当に生きた教訓を見せていただいたと思う。女性が何かしたいと思っても、今までは体力的に無理だとか、危険だとかいうことで阻まれてきたが、消防士の世界もここまで窓が開かれたのだと思う。その次の問題として、やはり性により違いがあることは確かなので、男性と伍して本当にこのような過激な仕事ができるのか、一体何年続けられるのか、その辺りが気になる。今後彼女たちが消防士としてやり遂げられるのか、それとも結局は途中から事務職に転じざるを得なくなるのか、追いかけていって欲しいと思う。

・消防士という人の命に関わる仕事についた女性、その若さゆえのとまどいや不安、情熱といったようなものが画面からよく感じ取られた。まだ1年も経っていないとのことなので、これから彼女たちはいろいろな失敗をしながら、一歩一歩一人前になっていくのだと思う。こういう形で番組にしなければ日の目を見ない現場をドキュメントするということは、本人たちにとっても今後の励みになり、モチベーションが上ると思うし、私たち視聴者として見れば、彼女やその他の消防士に対する感謝の念、こういう尽力で社会の安全が保たれているのだということが、こういう機会がなければ、なかなか分からないということがある。こういう番組を是非、小学生や中学生に見せてやりたいものだ。今、学校が荒れているというようなことが言われているが、そういう学校の現場でこのような番組を見せると、子供たちはどういう反応をするのだろうかと思う。放送時間が早朝と深夜になっていて、このような番組を放送するに相応しい時間帯になっているとは思えないが、このような番組が、子供たちの眼にも触れるよう、いろいろな機会に紹介するべきだとおもう。良い方向に向かえば、消防士が子供たちの憧れの職業になる可能性もある。さらに、今後追い続けていただき、彼女たちが一人前になっていく過程や、彼女たちに後輩ができたとき、彼女たちがどう変わって行くのか、そういうことも知りたいものだ。また、番組の中では良い言葉がどんどん出てきて、「悔しい思いは少しずつ自分を強くする」というような胸を衝く言葉もあった。番組を見て良かったと思った。

・私は、こういう真面目な番組が好きだが、幾つか感じたことを申し上げたい。このテレメンタリーという番組の25分間という放送時間は、長いと思う人もいるかも知れないが、一つの問題を取り上げる時間としては、やはり短い。おそらく俳句と同じで、相当量の材料をそろえながら、25分という時間の中で如何に上手く盛り込み表現できるか。思い切って材料を切り捨てていき、作り上げていくということになると思う。eatでは、以前にえひめ丸事件に関するテレメンタリーを制作しており、これは非常に出来が良く、私は最高の評価をしたが、このテレメンタリーというのは、ローカル局が取り組む形式としては、実力の発揮のしどころではないかと思う。また、女性消防士の問題というのは、単に消防士になりたい女性に門戸を開くという問題だけにとどまらず、消防士不足という問題が背景にある。そういう背景を踏まえ説明した上で、女性消防士の話に入れば、もう少し拡がりが出てきたのではないか。そこまで掘り下げると25分では収まらないかもしれないが、そういう視点がどこかに欲しかったと思う。また、こういう真面目な番組には、少し息抜きの余地が欲しい。こういう厳しい毎日を送っているが、女性消防士のちょっとした楽しみとか、余暇のような話題を少し入れると、苦しい訓練とのバランスがとれるように思う。こういうことをきっかけにして、これからいい番組をどんどん作って欲しい。

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