番組審議会

第59回 放送番組審議会議事録

1. 開催日時:平成13年1月25日(木) 午後4時
2. 課題番組:2001年 EAT正月特別番組
         「21世紀への出発 SL伊予路を走る! ‐松山・宇和島間103キロの旅‐」

          平成13年1月2日(火) 午後0時00分~午後1時25分(85分)放送
3. 記事の概要:
・京都梅小路からの移動から始まり、松山運転所での下準備と習熟運転、そして、本番の出発式と宇和島まで103km、往復12時間のSLの旅は、懐かしさと感動を覚える鉄道物語として、愛媛朝日テレビ開局以来の最高傑作といえる。やりなおしのきかないSLの運行に沿って、その瞬間を空撮をはじめ、沿線の撮影ポイントをよく選び、SLの勇姿を美しく捉えていた。そして、ラストシーンに代表される、SLの音とBGMとのオーバーラップなど、厳選された音楽と映像美の調和が感銘をを与える作品になった。吉村光夫さんのナレーションは、落ち着きのある分かりやすい口調で、番組の格調を高めていた。番組の構成は、SLの走る勇姿を「動」とすれば、停車駅にまつわる取材は「静」であり、そのバランスが番組を飽きさせなかったと評価するが、一緒に見た人たちの中には、キィ局の番組「世界の車窓から」のように、「動」を中心にする方が興が削がれなかったのではないかという意見もあった。

・楽しい番組で興味深く拝見した。機材、人員に制約があるなかで、さまざまな手法を駆使して立派な番組を作られたことに、敬意を表したい。私は、広島県の山村の出身だが、SLは必ずしも快適な乗り物ではなく、トンネルに入ると凄まじい煤煙が入ってきて、急いで窓を閉めなければならなかったことを思い出した。そういう意味では、なぜ今ごろ過去のもののはずのSLがうけるのかという疑問もあった。番組を見てもわかるが、SLは汽笛、機関車のピストンや蒸気の音など「音」が特徴的だということ、また、番組の中でもSLを擬人化した表現もあったが、SLは生き物なのだという感じを強く感じ、SLに郷愁のような感情、親近感を感じた。番組としては、この辺りが充分に表現できたのかが重要ポイントということになると思ったが、充分に成功していると思う。大洲では消防車がSLに給水するというシーンがあったが、あたかもSLが疲れているように見えて、ちょうど動物に一服させて、水をやっているような感じが良く出ていて、「生き物」というイメージを充分表現している。また、2台のディーゼル機関車に挟まれて、SLが可哀相に見えるというのも、うまい擬人化表現だと思った。番組の核心として、SLをどこでじっくり見せるのかというところを意識して見ていたが、なかなかそういうベストのシーンはないのだろう。そのあたりは残念といえば残念だった。

・予讃線では32年ぶりの運行ということで、逆算すると私が3歳のときには走っていたということになるが、残念ながら私の記憶にはSLの記憶はない。子供向けのアニメーション番組として、「機関車トーマス」というのがあるので、その印象を持ちながら番組を見たが、先のご指摘の通り、見ていて「生命」を感じた。運行の準備段階、京都から瀬戸大橋を経て松山に来るまでの労苦、本番前の点検、保守や習熟運転などの苦労が紹介されていて、そういう前段階があることにより、後半の走行シーンが生きたと思う。SLを記憶している世代の人には懐かしさを、知らない世代にはSLの生の感触を感じさせる良い番組だ。番組の初めのところではBGMがなく、やや物足りない感じがしていたが、気がつくとSLの汽笛や蒸気の音が大切なのだと気づき、SLの命のようなものが実感でき、感動で涙が出た。前半の準備作業や習熟運転のところは、見たことが無い場面なので自然に惹き込まれていったが、後半の部分になって若干間延びした感じになったので、もう少し短い番組にしても良かったのではないかと思う。印象に残ったシーンは、双海のところで初めは山側から、次いで海側から撮ったシーンで、地の利を上手く利用していたと思う。「懐かしいにおい」という表現では全く想像がつかなかったが、子供たちが「花火のにおい」と言っていて「ああ、なるほど」と思った。番組をみて、子供をSLに乗せてやりたかったなと思った。

・貴重な記録となる作品だ。いろいろな情報をよく調べていた。夜の場面では、虫の鳴き声などがインサートされていて、なかなか巧かったと思う。随所で地図が出ていたが、愛媛県の視聴者だとあれで充分だと思うが、全国の視聴者を意識すると、もう少し丁寧な造りをして、海岸線などを長めに見せるような手法が良かったかと思う。大和田建樹の話も出ていて、宇和島の視聴者も嬉しかったのではないか。

・私がこの番組で一番気に入ったシーンは、子供たちが「線路は続くよ…」と歌い、それがSLにオーバーラップしていくシーンで、何度が繰り返して見た。私は、むしろ後半部のほうが面白いと思ったが、視聴率の動きはそうではないだ。この番組では、SLの良さと現在との関わり合いというようなテーマを、テンポ良く、しかし軽々しくレポーターを使わないで実直に表現していて好感を持った。番組として京都からの出発から予讃線の走行までを順序通り忠実に再現しているが、これはお正月の1時間30分の番組としては、細かすぎてマニアックな感じを与えたかもしれないと思う。家族で囲んで見ることの出来る番組なので、説明から入る手法は、いささか息苦しい感じもする。1月2日という放送日をもっと意識した構成にすると、もっと良かったのではないか。最後に、この番組では、何か働くお父さんの姿のようなものを感じた。小学生の「総合学習」の教材にもなるように思った。

・かつて伊予鉄道横河原線でSLが走っていた頃の風景を、懐かしく思い出した。全体として、ほのぼのとした良い番組だと思う。吉村光夫さんのナレーションも良かったと思う。BGMも良く、場面としては上灘~長浜のところで海岸に沿って線路と国道が並行しているところが印象に残った。また、蒸気の音、線路の音が心に残った。先にご指摘のあった松山駅のコオロギの鳴き声など音声も活きていた。いろいろなデータが紹介されていて歴史の勉強にもなった。

・SLの走る姿は、私の記憶の中に残っていて、いろいろな場面を思い出した。先の意見にもあったが、汽笛の音と石炭の臭いの記憶が蘇った。いろいろな友達の思い出旅行の思い出も蘇って、涙なしには見られない番組だ。ただ、番組では大洲を過ぎると、すぐ宇和島になっていて私の出身地である宇和町の部分がとばされていて残念だった。においについては、「花火のにおい」というより、練炭火鉢と暖炉を混ぜたようなにおいのはずだ。練炭火鉢が分からないとすれば、七輪と石油ストーブを混ぜたようなにおいと言おうか。SLと子供たちをからませる造りは良かったと思う。また、BGMも最新のものと古いものとが巧く使い分けられている。昔から汽車にまつわる歌はたくさんあるが、やはり、歌詞の内容や表現が古くて理解できないのかなという気がして、すこし淋しく思った。この番組は永久保存版で、子供たちにも機会がある度に見て欲しいし、SLを走らせるためには、あれだけの苦労があるのだということも理解して欲しいと思う。また、機会を見て再放送していただきたいと思う。

・「花火のにおい」というのが子供の表現だったが、これは本当はいささか違っているはずだ。考えてみると、今の時代は「無臭社会」で、これはこれで健全な社会とは言い難い。どうしても「昔のこと」を教えるということが不可欠なのかとも思う。先ほどから絶賛の連続ですが、この審議会で、番組がこれほど賞賛されたことはない。私も審議会で番組をほめるのは、ずいぶん久しぶりなので、なんだか褒め言葉がなかなか出てこない。「最高傑作というのは言い過ぎ」と言う意見もあるが、確かに、そう表現してもいいぐらいの出来かも知れない。私の表現としては「EATの最初にして最高の傑作」といったところだ。

・この番組が成功したことの大きな要因は、SLに生き物を感じさせたという点だろう。とりあげた題材の良さ、SLの良さがこの番組に強いインパクトを与えている。昭和40年代にSLブームが起きたが、あの頃とは、また一つ違った雰囲気がある。番組の進行として、「軽薄なタレントやレポーターが進行役を努めるに違いない」という嫌な予感があったが、杞憂に終った。これはうれしいことだ。

・番組を拝見して、懐かしく、また、感動した。一晩中ボイラーの世話をする話なども興味をそそられた。また、色々な歴史的データも紹介されていた。SLは過去のものという先入観があるが、生き物としてのSLについての想いが沸き上がってくる。これは、単なるノスタルジアではないと思う。機械なのに動物のようなイメージ、生き物のような印象、そして長く尾をひく汽笛の音は、あたかも滅び行く動物の鳴き声のように聞こえて、印象的だった。また、かつて、産業革命の時代に絶大な貢献をした蒸気機関車の勃興と、第二の産業革命ともいわれるIT社会でのSLの受け止められ方という見方も出来そうだ。いろいろな機会を捉えて、再放送すると良いと思う。また、これはある種不思議なことだが、SLは画題となるが、電車やディーゼル機関車は画題にならない。この辺りも興味深いところで、そういう見方で見てみるのも面白いのではないか。

・SLが疾走する勇姿の部分は、良く出来ていて面白く、私も好きだ。確かにSLはノスタルジアを感じさせる部分がある。いかにも生き物という感じであるし、こういう点では電車などとは歴然と違う。惜しまれるのは、1時間30分という番組の尺で、これはいかにも長すぎた。走っているところに絞れば良かったのだが、ややくどい。また、むしろ苦心談は出さず、SLの美を徹底的に追及し、もっと晴れ姿を見せて欲しかった。また、京都からの回送など松山駅までの部分はまわりくどい。松山から宇和島までの話題に絞った方が良かったと思う。大和田建樹の話は、SLと一緒に盛り込むよりも、別途独立の番組を作った方が良いと思う。