愛媛のニュース

NEW 2025年12月18日(木 ) 20:36

音色は100年の時を越え…愛媛に残る2台のピアノ

松山市内に戦前建てられた施設に残る、1台のピアノ。

弾いた男性は、思わず笑顔を見せます。

【松原聡さん】
「まあ、よく残してくださったなと思いますね」

【宮本京子さん】
「教育会館の講堂に(1台)あったなっていうので」

歴史ある建物に残されたピアノの価値は…。

12月5日、松山市北持田町の県教育会館に1人の男性が訪れました。

【松原さん】
「『弦溝』っていうんですけど、弦の跡がくっきりついていますね。製造番号を探してみようと思います」

ピアニスト・ピアノ研究家として各地に眠るピアノの名器の発掘を行う松原聡さん。

1937年に建てられた、県教育会館のピアノを調べます。

【松原さん】
「ありました!ふー」
「39395とありますね」
「過去にも何台かフォイリッヒ見ていますけど、一番人気があったモデルじゃないですかね。ちょっと正直驚きました」

松原さんによると、ピアノはドイツの「フォイリッヒ」社製。

100年以上前のものとみられます。

【松原さん】
「フォイリッヒは世界的なピアノとして知られていましたし、世界的な名機が日本に来ていたということですよね。同じ県内に2台同じものが公共の場に保存されているのは、正直驚きました」

フォイリッヒ社のピアノ。
実は、西予市にも同じモデルが存在していました。

【松原さん】
「(確認した中で全国に)せいぜい10台、20台あるかどうかですよね。こんな風に、近い地域で同じ年代のものが眠っているのは過去に経験がない」

全国のピアノを見てきた松原さんもビックリ!

戦火をくぐり抜けたピアノが、愛媛に2台も残されていたんです!

ただ…。

「水のようなシミがあるので、水をかぶったかもしれないんですけど、十分乾いているので弦を全部新しくするとか」
「ちょっと今これで演奏会をというと、難しいですけど」

劣化が激しく、今の状態では舞台で使うには厳しそう。

「きょうはとにかく存在が判明したので、皆さんにご協力いただきながら、なるべく陽が当たるように、よみがえるようにお願いしたい」

珍しいピアノがあると聞きつけやってきたという、こちらの男性。

教師として、県内の学校で音楽を教えてきました。

【男性】
「きれいな音がするでしょ。100年経っとってもこんな音がするんじゃけん、すごいね」
「昔、私小学校6年だったと思うんだけど、声楽のコンクールで宇和の代表になってここで歌ったの、歌。その時の伴奏が、これ(このピアノ)だった」

西予市にあったフォイリッヒのピアノの存在が、音楽を好きになったきっかけの一つでした。

ピアノを弾いた彼は「おーすごい!」

【男性】
「ものすごく歌うんですよ、楽器が」
「何したって楽しみがないとね。楽しみがないと、何したってダメ」

長い月日の中で紡がれてきた、人とピアノの記憶。

年老いた鍵盤は新たな歴史を刻む日を待ちわび、澄んだ音色を奏でました。