放送番組審議会

2009年12月25日(金)

第144回放送番組審議会議事録

開催日時:平成21年6月25日(木)午後3時
課題番組:「報道ドキュメンタリ宣言」


1.開催日時:平成21年6月25日(木)午後3時
2.課題番組:「報道発ドキュメンタリ宣言」
毎週月曜日 19時00分~19時54分(54分)※2009年5月11日「さらば警察~わが人生に悔いなし~」について審議。
3.議事の概要:
・公安委員会の関係の仕事をしており、コメントしづらい部分があります。様々な人をよく知っており、番組を見る前から色々な情報も入ってきています。実際、県外の人が見るとすばらしい警察人生だったというイメージがあると思います。しかし、あまりにも美しい人生として描かれ過ぎて、本当の姿をとらえているのか、本当の追跡調査、家族も含め、本当に裏をとってこの番組を作成しているのか疑問を持ちました。番組として一方的にヒーロー扱いしてよいのか、疑問があります。むしろ、不自然さを感じました。
・私も松山生まれ、松山育ちで、出演されていた東氏とも古い付き合いです。はっきりいってコメントしづらいです。番組全体の流れから感じたことは、仙波氏に関することについて、「こういう見方があるのでは?」ということを言わせない、有無を言わせない番組作りのような感じを受けました。「こういう考え方、こういう見方があるのでは?」と言うと、「悪の味方か」と言われそうなくらい、そういった意味で力強い番組であったと思います。裏金は事実あったと思います。それを暴露したことについての功績は認めたいと思います。ですが、「上役に言われて何のために領収書を作るのか?組織を動かすためだ。」と言っていましたが、確かに組織を動かすためにはお金はいります。鉛筆1本盗っても窃盗は窃盗です。1億盗っても窃盗は窃盗です。裏金の目的、規模なども分析してほしかったです。難しいと思いますが、目的、本当に幹部の享楽のために裏金があったのか?それとも警察組織は予算上計上できにくい使い道のため、情報を取るためのものであったのか?警察組織は悪の組織である、幹部も犯罪者ばかりであるという表現がありましたが、その裏金の使い道、目的をもう少し掘り下げればもっと分かると思います。1回の番組では無理な話かもしれませんが・・・。仙波氏本人はもちろんのことですが、出演していた人は全て支持者や同郷者ばかりで、多少立場の違う人からのコメントもあるべきだと思います。日常的に裏金はあったのでしょうが、引ったくりに遭ったり、家に泥棒が入られたりすれば、110番をして警察に頼ります。最後の長野智子アナウンサーのコメントに厳しい部分もありましたが、私個人としては、大筋では県警は信用しています。問題があったことは間違いありませんが・・・。その点では、東京で作った番組なので、質問に対する県警の回答があまりにも「誠意のかけらもない」と切って捨てられていましたが、中央から「田舎の警察」ということで、上から目線で見ている言い方だと思います。
・裏金は当然あったかと思います。世間一般の目から必要悪の形として受け取られてしまう感じがします。新聞にも出ていましたが、マスコミでも取材をすれば謝礼などあります。県警で情報を得るためには、その資金をどこから出すのか?捻出方法など苦労があると思います。プールしたお金の使途がどこにあったのか、もっとあぶり出すと、もっと良いドキュメンタリー番組になると思います。
・属人的な問題と裏金という構造的な問題とは違います。お二人がおっしゃられた属人的なことははっきりと分かりません。色々あると思いますが、番組はその部分には触れずに、中央から見たという視点はありますが、地元マスコミの一員として見れば、この番組が中央から発進されるという、虚しさ、悔しさを感じますが、中央がよく分からないまま切り込んでいくという意味では敬意に値すると思っています。朝日新聞を含め、この報道は時間の経過と共にフェイドアウトしてしまい、一番肝心な、裏金がどれくらいあり、どういうことに使われて、という構造的なことが全く分からないままうやむやになってしまい、属人的な部分だけ、「彼はたいした男ですか?」という話にすり替わっていくのは、筋としては違っていると思います。3月31日に仙波氏が退職しました。私は4月1日付異動で、3月27日頃から松山にいますが、その事実は知りませんでした。何となく総局はそのような取材態勢ではなかったと思います。このままフェイドアウトして行き、この問題は県警自体も蓋をして忘れ去られれば良いという感じがあるので、そのような意味では意味のあった番組だと思います。東記者は、昔愛媛県警をまわっていた時に存じ上げています。その人そのものの属人的な問題もありますが、松山東高校の同窓生であり、仙波氏を一生懸命に支援するというのはなかなかできる話ではありません。ですがそれを「少し変わったやつだよね」という扱いは違うと思います。真偽は定かではありませんが、奥さんを病気で亡くされ、その後子供も後追い自殺し、本人も心筋梗塞となれば、東家は消滅してしまったわけです。そこに神がそうしたことかもしれませんが、なんとなく後味がよくないと感じました。この事件に色々な立場で直接関わっていれば情報はあると思いますが、私は情報が少ないかもしれません。そういった意味でマイナス、番組の本当はもう少しあるというところよりも、この番組の果たす役割はある程度あったと思います。
・この番組が一番何を言いたかったのか?テーマは何だったのか?というところで、お話がありましたが、属人的な部分と裏金の社会的問題性の部分とは一緒にしてはいけないと思っています。裏金は裏金として扱うべき問題だと思います。仙波氏は在職中に実名で告発し報復人事を受け、それに対して高松高裁がきちんとした判決をしたということは、それはそのままの事実としてドキュメンタリーの中でも報道されていました。それはそれで良いと思っています。ただ、一つ物足りないなと思ったことがあります。例えばその裏金があったことを告発し報復人事を受けたことにより慰謝料請求の裁判で勝ちました。その後の話で、結局裏金はあったようであるというこの番組の筋から見たとき、それに対してマスコミはどのように対応すべきなのか?ただ単に1人の勇気ある警察官がいました。そのような話で終わるのではなく、その裏金があるのであれば、どのようにすれば無くなるのか?世間ではどのような取り組みが行われているのか?というようなこともやっていただければ良かったと思います。裏金がなぜいけないのか?ということについて、もう少し掘り下げ、裏金が例えば幹部の人たちの遊興費に使われているのであれば横領ですが、横領だから悪いということなのか?ただそれだけの問題なのか?若い警官たちが偽造の領収書を書かされるというのは、警察官の若い人たちの志気を落とすことになるのではないか?仙波氏という警察の内部の人を取材しているので、内部の目から見た裏金がどういけないのか?ということもあれば良いと思います。
・これをきっかけに、今みたいな形での切り口、色々な形での切り口、地元番組で作れるようなところがあればぜひ対応していただければと思います。
・色々な広がりがありますが、あの時間の中で必要最低限のこと、仙波氏の出来事の一部始終を、仙波氏のみで描いてしまうとベッタリになってしまいます。鉄の扉が固くて開かないような警察にどのようにジャーナリズムがアタックしていったのか?はねつけられたのか?そういった経過も随所に出していかないと、最後にテロップ1枚で警察の答弁を出しただけでは説得力に欠けると思います。このジャーナリズムは仙波氏にベッタリで警察にアタックしないという印象を受けました。番組の作り方としては損だと思います。きれいに描かれ過ぎているという意見がありましたが、丹念に取材して良いところばかりを集めるとそうなると思います。もっと仙波氏自身が悩んでいる、マイナスの部分、陰の部分をもう少し出すことによって仙波像がもっと出てくると思います。番組を作るときは良い映像だけ集めると結局は失敗してしまうことが多いのではないかという感想を持ちました。
・私は複雑な思いで見ました。リアルタイムで家族みんなと見ました。見終わって納得できない、というのが私や母の感想でした。難しいことは分かりませんので、一般市民が見た感想として聞いていただきたいのですが、松山にいると色々な情報が入ってくるので、そのままの映像を受け入れることに違和感をもちます。俳優仙波敏郎の仙波敏郎劇場を見ているような気がしました。全てすばらしい、というような感想はもてませんでした。告発のことについても、やってこられたことは勇気がいる大変なことだと思います。家族3人のうち1人でも反対していれば告発しなかった、とコメントしていますが、「3人ねぇ・・・」と思いながら見ているのも、松山市民の素直な感想です。報道に関して、松山、愛媛の人は「裏金、裏金・・・」と聞いていたので、見た感じ目新しい情報は感じませんでした。ですが、全国発信として、全国の人が「このようなことをした人がいるのだ」と見る分には良いのかもしれませんが、愛媛で放送ということには違和感を持った感想を持つ人が多いと思います。人間にこだわって作る、番組概要に「ニュースの主役である人間にこだわり長期密着」とありますが、長期密着はとても大変なことであり、前から長期密着で番組を作ると良いと思っていましたが、真の姿を長期密着することに意味があると思います。一度、お花見をしている仙波氏を見かけましたが、表現するのが憚られるような格好をしていました。色々な話を聞くにつれてどれが仙波氏本当の姿なのか?と思って見たのが正直な一般市民の感想です。俳優だなという感じがしました。
・内部のことは知らず情報もないので純粋に番組として見ました。仙波氏という一人の主人公に対しての時間軸はしっかりとした番組だと思います。時間軸の設定に従いこの番組は進んでいっているのだと感じました。淡々と不正の発覚について北海道から振り返る手法は率直で良いなと思いました。北海道から入っていった時に、「そういえば新聞で・・・」新聞をしっかりと読んで記憶しているわけではないので、自分の情報のズレと番組とどのようにすり合わせていこうかということを考えながら見ました。自分の時間軸と向かい合わせながら見ました。仙波氏の人間関係、交友関係が感動的に映し出され、私の中のニュースの断片的な記憶がつながって行く一方で、やはり反対の目から見た仙波氏の行動に対する意見が出てこないことが、人物像や事件像に対して情報がない人から見ても、やはりそこには距離感があったような気がします。映像で印象に残っているのが、議員の方が撮った写真だと思いますが、資料室で仙波氏が一人ぽつんと座り、それを遠目の窓から撮っているシーンがあり、私は一人の人間として会社、組織の中で孤立している人間の孤独さが伝わり、辛かったことを感じます。その映像は、仙波氏に語らせるよりも、映像で、組織の中でぽつんと誰もいない古ぼけた机、椅子、ワープロがあるところに一人置かれ、1年間「何かやれ」と言われているだけで、松山城を見続けたという姿が人間として苦しかっただろうなと感じました。仙波氏の歴史の中の救いは、彼は県警の中では孤立していたかもしれませんが、社会的に孤立はしていなかったと思います。社会的な孤立というところが、彼が裁判の中で戦うことによって仲間に守られていた、生き様、現代の姿を見たような気がします。私は孤独感、孤立ということについてドラマ以上にドキュメンタリーから伝わってくるものが大きい、ドキュメンタリーの強さをそこに感じました。このような事件のことやできごとに遭遇すると必ず社会には虚無感が漂い、「きれいごとじゃないのよ、世の中は」ということや、「組織だから仕方ないのよね、これが当たり前の現実よ」といった、不正を黙認していくような虚無感が漂ってしまいがちになります。そのような気持ちが自分にないのかと言われるとないことはないので、私は率直に自分の中のちっぽけな正義感に向き合っていることを、例えば表明している人がいたのだということを、大切なことという確認マークが押せたような気がしました。裏金がどこに使われていたのか気にはなりますが、この短い時間の中で何か一つ一番よく分かったことは「孤立に置かれた人間の心情に対して、理解するということ」が映像から伝わってき、正義感という言葉が心に残りました。
・最近の警察は落ちたものだな、という色々な記事、報道があるので、余計に正義感を持った仙波氏を取り上げたのではないでしょうか?実際に仙波氏は知りませんが噂はよく聞きます。番組を見た限りは、すばらしい、立派な方だなと思いました。私の周囲にも警察の署長になった方や上部の方がいますが、その人も裏金で出世したのかと思ってしまいました。なんだか全ての人が裏金で出世しているようなイメージすら感じました。あまりにも強い表現だったので・・・。ある面ではそのようなこともなく幹部になった人の立場も報道の中で入れてもらいたかったです。仙波氏の周辺の人が警察の方から花束をもらわず、辞めるときには社会の人から花束をいただいた、などそのようなことは真面目に色々なことに取り組んでいればこのような良い事があるのだということ、いわゆる正義感に強い人は、こういう社会からも支持されるという教訓めいた部分がありました。ですがその反面、警察の中で最後の退職の日に何があったのか?それが全く分からなかったので、もっと中身を見せていただければもう少し良かったのではないかと思います。最後に判決が下った後、警察に3つ程質問をしていましたが、どれも曖昧な回答でした。警察としてすべきではないと思いました。きっちりとした答えを、お断りするところはお断りし、答えを出してあげないと警察本体が社会から変な目で見られ、だいぶ損をするのではと思いました。いくら仙波氏に対して悪い印象を持っていたとしても、結果は結果として良い結果が出ればそれは一つ良い答えを出してあげるべきだと思いました。実際には仙波氏という人の人間性は、番組を見ると非常にすばらしい正義感のある立派な方と分かりますが、その裏側、毎日の生活がどうなのか、分かりかねます。あまりにもそこのところが私には理解しがたい部分です。ですが番組は今の時代には良かったのではと思います。
・番組の構成としてはすばらしいと思います。内容は別です。言っていることは別として組み立てはすごいなと感じました。語られていない真実が仙波氏自身にもあると思います。番組を見たあとネットの書き込みを見ましたが、仙波氏はヒーロー的存在となっていました。このような捉え方を一般の方はするのだなと、違和感を感じました。確かに、裏金は悪いことだということを否定することは出来ないと思いますが、組織の中で見えないお金は必要である場合もありうると思います。裏金を肯定するつもりはありませんが、仙波氏が正義感で「これはいけない、不正なのだ」と色々なことに正義感を持って当たろうとされるのであれば、もっと別の段階で、色々な方法がもっとあったのではないかと思います。番組とは関係ありませんが、そのようなことを感じました。番組はあまりにも美しく描き過ぎています。この番組を見て悲しんでいる人、深く心に傷を負っている人がいるに違いない。その方たちはどのような気持ちでこのヒーローの姿を見たのだろうか?と思うと私の気持ちはそちらの方にいってしまいました。一人で松山城を眺めたという組織の中の孤独は確かに辛いと思います。ですが、そうなった理由、色々な犠牲があるわけで、大きな組織に個人が張り合って正義を追及する、ということになればやむを得ない当然の姿でもあると思います。裏金については途中からぼやけ、仙波氏の美しさ、正義感、すばらしい人間、そのようなところにだけいっていました。反対意見、真相などが全く映し出されていないのが物足りないというか、何なのだろうと思いました。決してこれは日本全国広く、愛媛県の事情を知っている人の見方と、全く知らない他県の人の見方とは明らかに違うということを感じました。番組としてはとてもすばらしく、さすがだと思いましたが、個人としては、内容は嫌いです。あまりにも私が事情を知りすぎているからかもしれません。警察の人は皆良い人です。私は100%信じています。
・色々な立場からの意見がありました。番組としては巨大な組織にメスを入れるということは大切なことだろうと思いますが、メスを入れたあとどこまで掘り下げていくか、色々な切り口があると思います。