第137回放送番組審議会議事録
開催日時:平成20年10月29日(水)午後3時
課題番組:「列島異変2008~ニッポン熱帯化の恐怖~」
1.開催日時:平成20年10月29日(水)午後3時
2.課題番組:「列島異変2008~ニッポン熱帯化の恐怖~」
9月20日(土) 19時00分~20時54分(114分)
3.議事の概要:
・二時間は長く、大変でした。見ていると来客があったり、電話が鳴ったりと、なかなか本気で見ることができませんでした。見ているうちに、日本の風物詩がなくなってくるのではと思いました。彼岸花前線、桜前線という言葉がありましたが、それが使えなくなるのではと思いながら見ました。南から上がっていくもの、北から南に下がっていくもの、色々気候によってものが出て行くと感じました。その中で水害のことがありました。本当に水害は怖いです。松山はあまり水害がなく、実感はないと思いますが、戦時中に、松根油を作るため、川の上流の山の松の木を切った為、雨が直接山に落ち、昭和20年前に大きな水害がありました。私もその水害に出会いました。テレビの中で5分経たない内に水が入ってき、と言っていましたが、子供心ですが、あっという間に床上まで上がってきた記憶があります。また、池に水が流れ込み、池の土手が決壊し、非常に強い水の勢いで、左右上下どこに流れるか分からない、とお年寄りが言っていました。現在の姫彦温泉の道が土手で水が溜まり、松山でも何人かの方がそこで亡くなっています。子供の時に記憶していますが、それ以上に、近代化された水害はもっと怖いと思いました。良いものを見せていただきました。皆が気をつけ、近代化になっていく時には、街の構造を考えないといけないと思いました。また個人的に食べ物に関わる仕事をしているので、イシダイの中毒は非常に怖いと思いました。オニヒトデから始まり、ガンビエルディスカスという毒を含んでいる微生物の藻ができ、小さい魚が食べ、それをイシダイが食べ、シガテラ中毒を起こすということが、アジを食べても、何を食べても起きるのではと心配しています。食の大切さ、食育と言っていますが、それ以前の問題でもう少し考えなければならいないと思いました。本当に今回の二時間の番組は地球温暖化についてよく表現されており、南から北まで、北から南までの放送局が協力しあい、私達に良いことを教えていただいたと感謝しています。小学校にもテープを回していただき、子供達にも見せてあげればと思いました。私も学生に食中毒の場面は見せたいと思いました。実に素晴らしく二時間にまとめてあり、部分的に分からないところはありましたが、私としては良い番組だと思いました。
・ドラマがあり、色々なところの中継があり、ゲリラ豪雨、蝉の場面ではミステリー調で迫っていき、色んな手法が使われていたところが非常に面白かったです。「都市型ゲリラ豪雨を捕まえろ」というところは、ウェザーニュース社が出てき、東京の地図が出、どこに雲があるのかを追っていき、ミステリー調ではありますが、リアルな話でした。2年前まで飯田橋に住んでいたので、豪雨が降る映像を見て、「あそこにいたらあんなに雨が降っていたのだな」と興味深くみました。「松尾芭蕉の蝉はどこに」という部分は、地域が北上していき、それぞれの地域で蝉を探していくという、一般視聴者参加型があり、面白かったです。最後に「芭蕉の句に登場するのはニイニイゼミであり、芭蕉の蝉の声はどうなるのか」等の落ちが付いており、「なるほど」と思いました。個人的には食べ物のところは、どこに毒があるのか分からない河豚が出るという内容や、宮島のアナゴ飯弁当が好きですが、40%程アナゴの収穫高が減っているという内容は、実際そんなことが起こっているのかと感じました。りんごが日焼けしている等のリアルな映像を見ることができたので、非常に分かり易かったです。宇和海のオニヒトデのシーンは先日見た「四季の国」の映像だと分かり、楽しく見ました。ドラマの中で、雨が突然降ってきて、母親役が車から出られないというシーンがありましたが、少し前、ニュースで実際にありましたが、私も車から脱出するスパナは早急に買おうと思いました。日本全国でどのようなことが起こっているのかが、映像で分かり易く表現されていました。最後のまとめ部分は、色々な場面で視聴者の不安を煽るだけで、「できることは身近なところからやりましょう」だったので、視聴者としては救われない。せめて「国ではこんな対策を立てている、予算は環境費にこれくらい使われている、CO2削減の研究にはこういう研究が必要で、これだけ予算が必要だが予算が足りない、」という、大きいところで働きがけができるような情報が最後にほしかったです。
・テレビ番組はクイズ番組が大流行です。どこの局もクイズをやっていますが、全く面白くありません。ですがこの番組は非常に面白かったです。知的関心というニーズに答えていたからです。個人的には、ヒグラシが7月頃から鳴いており、おかしいなと思っていました。それぞれ皆が抱えている問題について、この番組は答えていました。最も質の高いエンターテインメントは、科学の裏づけがある情報番組です。非常に、手間がかかりますが、それをやらないと今のテレビは見向きされなくなると思います。今のテレビのやっているクイズ番組は、ただ賑やかに、知られているようなことをなぞっている様な番組が多いのですが、今回のような番組をすれば、今のクイズ番組は駆逐できるなと思いました。小さな局が集まると大きな力が出るということを、はっきりと示しているので、民放が束になれば、色々なことが出来ると思いました。作りが科学番組であり、情報番組であり、エンターテインメントでもあります。厭きさせることなく巧みな構成でした。また、あまり詰め込みすぎていないところが良いと思いました。あまり見ていて疲れず、肩肘張らず最後まで見ることができました。番組を見て何か一つ得る所があれば良いといつも思っていますが、得る所が沢山ありました。それば何と言っても視聴者への大サービスであったと思います。最後のコメントが肩透かしという意見がありましたが、これは逆に言うと、だからこそ視聴者、私達が何をすれば良いのか考えるよう、投げかけたと思います。さまざまな方法を提示することも一つですが、これは視聴者が番組を通して一緒に考えていくきっかけになる番組という点で優れたものだと思います。女性アナウンサーが沢山出てき、全体にこの番組をやわらかく、良いものにしていたと思います。知的であり、やわらかみがあり、点数をつけると99点で非常に良い番組だと思います。
・毎年祭りの御神輿の時期になるとキンモクセイの香がします。今年もキンモクセイが咲き良い香がし、祭りだと感じ、なんとか暖かくならずにその時期に、キンモクセイが咲いたといつも安心感を持っていました。普段ゲリラ豪雨、温暖化等、ニュースでは見ますが、これだけまとまった形で二時間見るということはあまりないので、すごくインパクトは強かったと思いました。水没したところで、どのように逃げれば良いのか、見た時は思うのですが、この番組は投げかける番組として、一本成立し、その後番組として、これに対する対策として別に作れば雑多な印象にはならないと思います。今回のこの番組にまとめてしまうと疑問があるので、二時間でこれだけの情報は良かったと思います。警告を鳴らすことと、恐怖心を煽るということの境目は難しいと思います。普段から心がけることを呼びかける番組として良いと思います。「ゲリラ豪雨を予測せよ」という部分は、岡崎に知り合いが住んでおり、その豪雨を経験したらしいのですが、空が暗いはずの時間に稲光だらけですごく明るかったらしいです。そのように予測する時に必要な情報も大事かもしれませんが、その時の現地の情報、声を盛り込んでいれば良かったと思います。体験者の声は学者の机上論より得るものが大きいと思いますので、織り交ぜても良いと思いました。女性アナウンサーが沢山出ていましたが、VTRが多かったので煩くなく良い感じでした。一人、海に潜った生物学を専攻していた女性アナウンサーがいました。文型で育ちの良いお嬢さんという印象がありましたが、自分で潜ることができる人を雇うというのは、今後の採用のヒントになるのではと思いました。色々なジャンルができる人をアナウンサーに起用するということは良いと思いながら見ていました。「クマゼミが見つからなかった」ことは番組的には残念かもしれませんが、私達としては見つからなくて、温暖の線がずれていないということを証明できたのでホットするはずなので、中のコメントで「一安心ですね」と少しでもあれば、見ていて着地ができたと感じられると思います。番組では「クマゼミ発見」と言えば盛り上がりますが、穿った見方をしました。ですが二時間あっという間でテンポ良く見ることができました。
・意見が殆ど出ていますが、私も知ることが沢山ある番組だと思いました。番組を見ようか見まいかと思う時は、最初のダイジェストが大事だと思います。最初のダイジェストは迫力がありました。編集された方はすごいと思いました。これまでの映像の記録の蓄積、CGを上手に使っており、特に水溜りに映ったビル、公園の風景を二回盛り込んでいる部分は、センスが良い方のダイジェストだと思いました。見る方にも、良い意味での気合が入りました。怪奇生物、○○の悪魔、迷惑生物というネーミングが出てきますが、人間が最初に持ち込んだり、飼えなくなったペットを放したりしたことがきっかけになっている部分を考えると、温暖化と人為的なことが摺りかえられている、誤解をしそうな所がいくつかありました。沖縄木登りトカゲも、怪奇生物とは言われたくないと思います。確かに爬虫類を好きな人は少ないかもしれませんが、怪奇とまでどうして呼ぶのかと思いました。カメムシは悪魔と言われていました。それはある人から見るとそう見えるかもしれませんが、本当に虫、生物が怪奇であったり、迷惑であったりしている訳ではないので、言葉の選び方は、このような番組だからこそ丁寧であってほしかったと思います。結末は肩透かし派です。「小さなことから何か始めましょう」は、結局一般的な落ちだと思います。盛り上がったこの気持ちをどこに置けば良いのかと感じました。提言とまでは言いませんが、社会の問題点等が入っていれば良いと思いました。
・実を言いますと災害男です。阪神大震災では自宅を失い、5年ほど震災の取材に関わった経歴があります。北兵庫で丸山川決壊の真ん中におり、街の8割が水没しました。一級河川の堤防はこんなにもろいものなのかと感じました。集中豪雨はどこにでも起きます。都会で発生すると大騒ぎしますが、田舎でも発生します。田舎の山川が荒れ、急に水かさが増し、急に水かさが下がります。災害は身近なものという感じがしています。災害報道に関しては、真正面から見なければいけませんが、総力戦の勝利だと思いました。一つ一つの素材が全てニュースで構成されており、非常に掴みよく迫力を持ったままで番組の中に入っていけました。掴みの良い番組の入りだと思いました。ニュースの構成ではありますが、ドラマ仕立ても組み込まれていました。また自然災害だけではなく、文化、情緒までが崩れていくという、幅を広げて、できの良い番組でした。こんなに大きいものを扱うときに、小さなことからで良いのかと思いました。車1台2台から始まり、立派な車ですので6人くらい乗れますが、一人で車に乗っているというおかしい現場があります。大災害をテーマにしているにも関わらず、小さなことからということにギャップを感じました。温暖化は地球が暖かくなっているので、二酸化炭素を身近なところから減らしましょうということではないと思います。経済活動が世界環境を崩しています。ガソリンの値段が上がれば車に乗らないようになる、円高株安になれば車を買わないようになる、我々の行動規範は倫理、「~しなければならない」ではなく、「これやってられない」という実感として現れてくるところから行動が始まります。素直な人間構造理論に基づいたものにこの番組がなっていなのではないかと思いました。今の経済が地球環境にとって良くないということがありますが、実は健康的な生活ではありません。考えているということが結論の中に哲学的に言わなくても良いですが、そういう風に考えさせられる着地であれば良いと思います。
・二時間はとても短く感じました。画面の上に「あなたは環境についてどんなことを注意していますか」というスーパーが出ており、ずっと読んでいました。そうすると下の画面を見ることができませんでした。スーパーが下にあれば、下を見ながら上を見る習慣があるので、下にスーパーがあれば、画面も一緒に見易いのではと思いました。私だけかもしれませんが、ピアノを弾いているのでそう思うのかもしれません。エコは一つのファッションでも捉えられている部分がありますが、環境問題の根底にあるものを取り上げていたので良いと思いました。蝉の北上化、クマゼミの大量発生等、教養がなくても良く分かる内容であり、子供でも良く分かる内容であると思います。「小さい事だが、大切に注意しないと、怖いことが起きるよ」と親が子供に画面を見ながら説明できる番組だと思いました。最後の部分ですが、これだけの大きいことを取り上げた番組なので、数字が欲しいと思いました。詳しくなくても良いので、数字の提示や、相談場所等の紹介が2、3あれば、もっと意識が高まるのではないかと思いました。全体的に良い番組だと思うと同時に魚は怖いと思いました。なんでも釣って食べる時代ではないと思いました。大変勉強になりました。
・総体的に言いますと、このような環境をテーマにした人類に警鐘をならすような番組は必要だと思います。一つの番組での落とし所を色々な思いで見ていると思います。問題提起だけで良いという意見、第二弾を作るのであれば個人レベルでどうするのか、行政レベルでどうするのか、地球規模でどうしていくのか等の落とし所が必要であるという意見がありました。正にこのような番組は日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ各国でこのようなテーマについて番組を作っていると思います。特にBBCは非常に飛びつくようなテーマの番組作りをしているのではないかと思います。他局というより、他国の同じ様な番組を比較しながら見てみたいと思いました。